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非永住者の課税

国際税務のプロが教えるエクスパットのためのガイド


はじめに:日本での非永住者課税を徹底解説

日本の税法上、居住者の税務を「永住者」「非永住者」「非居住者」の3つに分けています。非永住者は、主に日本に5年未満滞在する外国人居住者に該当し、課税範囲が限定的になるのが特徴です。これにより、国外所得の一部が課税対象外になる可能性がありますが、ルールを守らないと二重課税や追徴課税のリスクが生じます。この独特な税務カテゴリーは、非永住者がどのように課税されるかについての明確な理解を必要としています。それでは、非永住者の定義から課税対象までを詳しく掘り下げていきましょう。


1. 非永住者とは何か — 定義と背景

非永住者とは、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人を指します。

まず、国籍要件として日本国籍を有しないことが必要です。日本人であれば、海外居住歴がどれほど長くても非永住者になることはありません。

次に、期間要件として過去10年以内の日本居住期間が通算5年以下でなければなりません。この期間計算は連続である必要はなく、断続的な滞在期間の合計で判定されます。

来日した外国人のように日本国籍がなく、日本での居住期間が過去10年以内に通算して5年までであれば、非永住者として認定されます。


2. 非永住者に対する課税範囲

日本の所得税法では、個人を居住者、非永住者、非居住者の三つに区分し、それぞれ異なる課税範囲を適用しています。

非永住者以外の居住者は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。一般的にはほとんどの日本人がこのケースに該当します。

一方、非永住者は限定的な課税範囲が適用され、以下の所得のみが課税対象となります。

  • 国外源泉所得以外の所得(国内で発生したすべての所得)
  • 国外源泉所得で日本国内において支払われたもの
  • 国外源泉所得で日本国内に送金されたもの

この制度により、非永住者は海外で稼得し、日本に持ち込まない所得については日本の課税を回避できます。

非居住者については、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)に限って課税されます。


3. 非永住者課税の具体例

非永住者の最大の特徴は、課税所得の範囲が「永住者」より狭い点です。永住者は全世界所得(国内外問わず)が課税対象ですが、非永住者は以下の所得に限定されます(所得税法第7条の取扱いに基づく運用)。

  • 国内源泉所得
    日本国内で生じた所得すべて(日本企業からの給与、国内不動産の賃貸収入、国内事業の利益など)。
  • 国外源泉所得のうち、日本国内で支払われたもの
    例:外国企業からの報酬が日本支店経由で支払われた場合。
  • 国外源泉所得のうち、日本国外で支払われ、日本国内に送金されたもの
    例:海外口座に貯めた投資収益を日本に送金した場合、その送金額が課税対象。

「送金課税」のルールがポイントで、国外所得を日本に持ち込まなければ税務負担を抑えられます。ただし、送金の定義は広く、クレジットカードの国内利用や日本での資産購入が送金とみなされる場合があります。

税率は居住者と同じで、所得税(5%~45%)と住民税(おおむね10%)が適用され、最大55%程度。控除も利用可能です。二重課税を避けるため、国際条約や外国税額控除の活用が重要です。

ケース例:米国人エクスパットが海外株の配当を日本に送金せず保持した場合、日本では非課税ですが、米国では申告が必要。


4. 永住者・非永住者・非居住者の比較
区分国籍過去10年の国内滞在年数課税対象範囲
永住者制限なし制限なし全世界所得
非永住者外国籍のみ5年以下国内所得 + 送金・国内払いの国外源泉所得
非居住者制限なし1年未満(住所なし)国内源泉所得のみ


5. 実務上の留意点と節税・リスク管理

ここでは、送金された国外源泉所得の理解が重要になります。

国内において支払われたものとは、第3者から直接国内の非永住者に支払われたものを意味し、国外から送金されたものとはそれ以外(国外で第3者から支払いを受けたもの)で国内に送金されたものを意味するものといえ、以下のような点に留意が必要です。

  • 送金判定の証憑(銀行明細、資金移動記録等)を保存する
  • 所得の源泉区分(国内/国外)や支払地を明確化
  • 条約・外国税額控除の可否を事前検討


6. まとめ — 国際税務戦略の一部としての位置づけ

非永住者制度は、日本に滞在する外国人にとって重要な税務優遇の一つです。適用条件や課税範囲を正しく理解し、滞在計画・送金ルート・資産配置を最適化することで、合法的な節税が可能になります。企業側も戦略的活用により、国際人材確保やコスト管理に役立てることができます。



KAZUHISA MOCHIZUKI 2025年8月9日
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